ボンヴィヴァン(伊勢外宮前 ボンヴィヴァン)

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プロフィール 河瀬毅 


■クロード・デュガ (11.02.04)


プシュー。TGVの扉が開いた。出迎えの笑みに安堵してルノートラフィックに乗り込む。
工事中のディジョン駅前。なんとここに地下鉄でもなく路面電車が通ると言うのだから驚きだ。時代に逆行?いえいえ、地球環境に対して地方都市の取り組みの答えがトラム。
これこそ長い目で見る街づくりへの思考。ほとほとフランスと言う国にはやられてしまいます。

マルサネを過ぎてフィクサン。ここはひとつブルゴーニュ訛りでフィサンと発音しましょうか。
特級畑のない村々を瞬時に通過してジュヴレ・シャンベルタン村に入る。
碁盤の目などくそくらえ。道が先か家が先か。クネクネと自由自在に曲がった道なりに 愛らしい石積みの家々が立ち並ぶ。
横眼でそこを通り越し、まずは畑を見なくちゃ僕たちの旅は始まりません。
ワイン街道。その両脇に村名AOCの畑がへばり付き、奥の斜面はクロ・サンジャック やレ・カゼティエなどの1級畑が広がる。
なるほど、こうして眺めると陽当たりが良い場所は一目同然。
さらに進むと、いよいよマジ、リュショット、シャペル、グリオットなどの特級畑群だ。斜面とは呼べないほどなだらかな傾斜。土壌と水はけの関係が絶好なのでしょうか。
グリオット・シャンベルタンと言えばクロード・デュガ。案内人の御足労のおかげで僕たちは幸運にもそのドメーヌに訪問することが出来ました。
古い家々が連なるこの村の中で一番歴史があるこの建物は13世紀から続いていると言うのだから驚きだ。
入口の右手に馬小屋。正面には母屋。その向こうにある当時収穫の10分の一を税として納めていたという麦倉庫は、レティシアのお爺ちゃんの代により1973年にワイン貯蔵庫に改築された。
レティシア、ベルトラン、ジャンネの3人の子供たちが造るワインを飲む。あまりにも高価で希少なデュガのワインに代わるデュガテイスト。一次発酵のワインを家族で試飲して誰か一人でも否定的なコメントを出そうものなら醸造しないという徹底ぶりだ。。
家族の結束が生み出すネゴシアン・ジブリオット。この貯蔵庫で約15カ月間樽熟成させたものを飲む。エチケットには、畑で働くブルゴーニュの乙女が描かれている。
2006年より2007年はフルーティ。2009年はジャム。濃縮した味に長期熟成の高いポテンシャルを感じる。数種類テイスティングした後、いよいよデュガの樽へ。
クロード・デュガ。偉大なる生産者。ロバート・パーカー氏が100点満点を付けたことでも知られる神の造り手は、太陽を求めてバカンスに旅立ち、残念ながらお会いすることは出来なかったが、穏やかで寛容な素晴らしいお人柄だと聞いている。もちろん3人のお子さんを拝見しても想像は難しくない。
かたや、目と鼻の先にあるドニ・モルテ。2006年、50歳の若さで猟銃により自らの命を断ったブルゴーニュのスーパースター。繊細で完璧主義者の非の打ちどころのないワインはやはり心が痛くて飲むには辛い。
再びクロード・デュガ。過去にシャルム・シャンベルタン2003年を飲んだことがある。柔らかく優しく純粋でフィネスを感じた。 そんなワインをご本人の蔵で飲めるなんてなんたる幸運。
積まれた樽の造形美。
レティシアがプルミエクリュの樽にスポイトを差してルビーの液体を吸い取る。そして僕のグラスに注ぐ。
序章の始まり。グラスを持つ手が震える。
そして、1級から特級に移りグランクリュのシャルム・シャンベルタン。
ジュブレ・シャンベルタン村のグランクリュの特徴は骨格があり力強い。
感嘆しながらも最終着地点グリオット・シャンベルタンをいただく。樽熟成が終了し2,3日後に瓶詰される最後の最後の汲みだしワイン。その名もグリオット(野生チェリー)
濃くて果実味に溢れ生き生きとした神のワイン。
何代にも渡り畑を守り続け、丁寧に正直に作業する家族。顔は荒れ、手は赤切れても情熱の炎を消そううとはしない。 ワインは造り手の心を写す鏡。
おお!こいつはどうだ。こいつはなんだ・・・。お花畑にいるようなダンスでも踊りたくなるワインではありません。言葉を失い、ただひたすらワインにひれ伏すものでもありません。
造り手への感謝と尊敬。驕らず偉ぶらず寡黙でそれでいて人に優しく。
ひたすら真面目に自分を信じて一生懸命に人生を歩めば僕にも道は開けるのでしょうか?
トツトツと素朴に語るレティシアは、僕たちが贈る賛辞の言葉と幸せそうな顔を見ていたら辛さも苦しさも吹っ飛びましたとはにかんだ。
グリオット・シャンベルタン。たったひと樽半の神のしずくは僅か300本の瓶に詰められて世界中のワインラバーたちに熾烈な争奪戦をいざなう。でもそんな下界のことなど王様には知る由もない。
再びグラスを傾ける。
どうにも止まらない感情の嵐が押し寄せる。真摯に生きる人々の神々しいまでの魂の結晶にふれた僕は堪え切れずに恥ずかしい程の涙を流してしまいました。

カーンカーンカーン。ブルゴーニュの正午を知らせる鐘の音(おと)。
お昼を食べに兄弟たちが戻ってくるのよ。
靴を汚した若い造り手たちと握手を交わす。
日本に行ったけど食う物の量が少なくてまいったよ。イモも少ないし・・・。それと豆腐だけは勘弁してほしい。
この若者たちが、これから先、何十年せっせと畑を耕して数珠玉のブドウをワインへと昇華させる。
マルサネ・フィサン・ジュブレ・シャンベルタン。モレ・サンドニ、シャンボール・ミュジニィ。
地図を赤ペンでなぞって学習したワイン街道に立つと、曲がったT字型のように剪定された葡萄の樹が見事に整列しているコント・ジョルジュ・ヴォギュエの畑やバッテリーを仕込んだ赤いチョッキを着て電動挟みを駆使する農夫たちの姿が目に入る。
右手にはコートドール。(黄金の丘)
ようやく僕はワイン街道を歩きだせたような気がします。


今回のワインツアーでお世話になった篠塚さんのサイトです。
http://www.bourgognedirectwines.com

 


 

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