■神馬堂の焼餅
再び京都に行って来ました。
桜の咲く鴨川をどうしても見たくなり、家族を連れて日曜の夜に出発。(日曜は夜定休です)
高速、一号線、高速と乗り継ぎ9時半には到着。ホテルに荷物を置き、いざ河原町へ。
夜桜見物でごった返す四条大橋から鴨川を見下ろしほっと一息ついて、高瀬川の桜を見ながらブラブラと下り、事前に知ってはいたものの鶉亭の定休日を恨めしく思いながら無人の店の前で記念撮影をパシャリ。そして更に下って行きました。
途中、焼き鳥屋、居酒屋、イタリアンなど素敵な店が軒をならべ街づくりに一役かっており気持ちよく散歩が出来ました。
私は、一年間を京都で暮らしたんです。この街にあるレンガの大学の受験に失敗してリベンジのため猛勉強するはずだったのです。
ところが・・・予備校で友とめぐり合い(合わなかったほうが良かったかも)失恋の痛手も合わせて波乱万丈の一年を過ごす羽目になりました。
目標の大学の学生会館の前にあった噴水で水浴びしては、大騒ぎになり斜め前の交番のおまわりさんに追いかけられたり、下宿近くの京大を目指す予備校の学生寮の前で「受験生諸君。体を壊すまで勉強するな!」
と深夜に叫んでは窓からティッシュの箱やら漫画本を放り投げられたりとさんざんなことばかりの青春時代でした。
話は変わって、その寮の近くの上賀茂神社前に神馬堂というしにせの焼餅屋さんがあります。
御薗橋でバスを降り下宿へ向かう途中、すさんだ私の心を癒してくれるのが一個の餅でした。
かさっとしていながら柔らかく中には粒あんがたっぷり入っていてそれはそれは美味しかったのです。
餅をかじりながら桜の咲く鴨川の土手に腰掛けて、これから一年どうしてやろうかと考えていたのが、ついきのうのことのように覚えています。
桜の咲く鴨川を見て、33年ぶりに神馬餅が食べたくなりました。「よし、それをお土産にしよう」
店の前に車を止めて家族を車中に残し「餅を30個下さい!」
外宮前店のスタッフ、美術館店のスタッフ、父母、伯父と指を折っていたら、困った顔をして売り子のおばさんが「もう4個しかおまへん」(京都弁を間違っていたらすみません)・・・絶句しました。
しかし当時はたった一つで満足。4つならちょうど家族で4つ。
店の前の車中で食べた久しぶりの味は言葉にならないほど格別でした。(スタッフにごめんなさい)
不思議なものです。あんなに失恋でへこんだ相手と再び出会い結婚し当時の私の年齢と同じくらいになった二人の息子と、ちょうど残り4つの餅を食べている。しかもみんなが口々に「無茶苦茶美味い!」と言っている・・・。
お恥ずかしいぐらい、ちっちゃな幸せですが、私は本当に来て良かった・・・。
さて、肝心のレストランの話をしましょう。
今回は、以前お話した日本最年少シニアソムリエおすすめの店。それは出町柳にあるスリージェと言うビストロです。
幸い予約してあったので入れましたが、沢山の人が満席のため帰っていきました。
店内はポスターがいっぱい貼られており良い雰囲気です。料理は素朴でしみじみとした感じ。
息子はソーセージが美味しいと喜んでいました。
シェフとマダム(おそらく)の二人三脚で18〜20席を回しているのですから凄いし、大変だと思いました。
でも毎度のことなんでしょう。涼しい顔して美味しい物を、待たさずピシャっと出すのはテクニックが優れて
いるのですね。感服いたしました。
フロマージュドテート(豚の頭のゼリー寄せ)とトリップアラモードカーン(牛胃袋のカン風煮込み)をいただきました。
シェ・ジャニーの料理とは少し違いましたが、それがそれぞれ料理人の個性と言うことなのです。
私は批評家ではありません。ただひたすら同席者と楽しく食事をしたいと願っているただの食いしん坊です。
この日もワイワイと笑いながら満足に過ごし店をあとにしたしだいです。
その後は、錦市場をのぞき有次の鍋を穴があくほど鑑賞し心の中で「この棚のここからここまで全部頂戴」と
つぶやいておりました。・・・今度この街に来れるのはいつ頃かな?私の独り立ちの原点の街に。
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