■花嫁 (10.10.30)
只今ご紹介いただきました河瀬です。新郎新婦様ご両家の皆様、本日は誠におめでとうございます。そしてこの良き日にお招きいただきましたことをお礼申し上げます。
さきほどの結婚式も素敵でしたね。芝生に囲まれた白いガラス張りの教会。厳かでありながら清々しい。ガラス越しに見える風景は健康的で爽やかで気持ちがいい。二人を見守るように大きな大きな白いカサブランカが活けられていて、まるで映画のワンシーンのようでした。
私はこれから、白い大きなカサブランカを見るたびにきょうの日を思い出すことでしょう。
宴は、いま始まろうとしておりますが、この時点ですでに満足です。
立派なホテル。そしてスタッフのよどみなく優しいサービスと進行は、とても心地よくて心から癒されます。このような経験をさせていただいたことを皆さまに深く感謝いたします。
そろそろ、新婦の話をさせていただきましょうか。
彼女は・・・本当に良い女の子です。明るくて誰に対しても分け隔てせず優しい。
ボンヴィヴァンにとって無くてはならない人物です。
大場家の皆様に申し上げます。彼女は絶対に大丈夫です。新郎をささえて幸せな家庭を築いていくことを私が保証します。
何故こうまで自信を持って言えるかと申しますには、まず私たちの一日を知っていただくと分かりやすいかも知れません。
私たち は、朝8時過ぎから22時頃までひとつ屋根の下で一日中一緒に過ごします。忙しい時期は日をまたいでしまうことだってあります。交代制の勤務ではないし休 憩も取れないこともある。それでいて食事はみんな一緒。休みに遊ぶことも少なくありません。街場のレストランの現状とはこんなものなのです。親や友達や恋 人と一緒に居る時間より長い。
もし、人格的に優れてなかったり協調性に欠けているとしたら、とても一緒にはいられません。
毎日を楽しく笑って生き生き仕事する喜び。間違いなく彼女は輪の中心にいる存在です。
新郎と初めて会ったエピソードを話しましょう。新婦から彼が初めてボンヴィヴァンに食事に来ることを聞きました。
今か今かと待っていたのです。普通そういう場面は、これまでの経験から大抵察しがつきます。
来店して席に着いたら私の方から近づき、初めましてと挨拶を交わすのが通常です。
それがいけないの?と問われたら・・いえいえ、いたって普通ですよと答えます。
しかし、この若い料理人は違いました。
どうぞこちらへとマダムが席を勧めても、まずはシェフに挨拶をと告げていきなり厨房に現れたのです。
爽やかな笑顔と共に元気よく・・・。一発でやられちゃいました。さきほど主賓の挨拶の中で新婦を褒めていただいたように・・・私もね、あの時に心がストンと落ちたんです。
礼儀正しく誠実な男は、おそらく彼女のために勇気を振り絞って脇目も振らず私に向かってきてくれたと想像します。
まだ彼の料理を味わったことはないのですが、このホテルの調理場で仕事が良くできて美味しい料理をこしらえるだろうな・・・と思った初対面の瞬間でした。
そんな二人が先程モーガンに乗りチャペルから披露宴会場へと走り抜けました。
英国車モーガン。僕は古い英国車が大好きでモーガンは憧れの車のひとつです。70年以上も姿、形が変わらず、レザーシート、ボディ、内装のほとんどを手作業で作りだす。
車は、おおざっぱに言うとタイヤ、ボデー、エンジン、シャシー、フレームと分かれます。モーガンは、二人を乗せた座席の下が木の枠で出来ている。車軸を受けるシャシーの上は全て木製フレームなのです。それがモーガンのこだわり。何故木に固執するのか?
フレキシブルな対応が要求されるオープンカーのドライビング。モーガンは木材の持つ柔軟性を必要とするのでしょうね。
無理やりなこじつけですが、二人の長い人生。たとえ困難が訪れようとも多少のショックはモーガンのように腰の下でさばいてください。
結婚直後に初めて乗った車が、せっかくのモーガンなのですから。
さて、さきほど席についてすぐにメニューを拝見しました。いやしくてすみませんね。お腹がペコペコなのです。
それに しても凄い。オマール海老に焼きウニ。伊勢海老、鮑、フォワグラ、牛フィレ肉。一生分の御馳走です。加えて中華の料理長からは、フカヒレスープ。和食の料 理長から赤飯などの祝い膳。いかに新郎が普段からみなさんに可愛がられているかが伺える夢のような献立でワクワクします。
粛々とした結婚式は終了しました。今からは食事を楽しんで大いに酒を飲み、はじけたいと思います。
皆様、それでは思う存分この披露宴を満喫し二人を盛大に祝おうではありませんか!
長らくのご静聴ありがとうございました!
このようにショーは開幕した。
そう言えば女性スタッフの結婚式に招待されたのは初めての経験。
新婦側から見る結婚式は、艶やかでそのくせちょっと悲しい。スポットライトがこんなにも眩しくて、ゆらゆらゆらめくキャンドルの炎に幻想を感じたことはなかった。
新郎友人たちの力強い歌声に切れることない友情の絆をひしひしと感じ、新婦同僚の甲斐君が製作した渾身のDVDは、彼女の日常と仕事ぶりを余すことなく伝え、会場一同は呆気にとられて固唾を飲んだ。そして過ぎていく一分一秒が名残惜しかった。
幸運にもあの会場に居合わせた方々に申します。
みんな同じ気持ちでしょ?これから結婚式を迎える人。いつかは分からないけど結婚を夢見る乙女たち。こんな素敵なウエディングをしたいと思ったよね。
誰もが心の底から感動して祝福する空間。僕は、あなた方と最高の時間を共有して幸せでした。