皇學館大学での地域再生講義

皇學館大学での地域再生講義

皆さん、はじめまして。
河瀬と申します。    

先日、岸川先生から去年の講座を受けられた方々の感想を見せてもらいました。
その紙には僕たちが食に関して話した印象が、ひとりひとり丁寧にびっしりと生の言葉で書き綴られていました。
私、正直、感動したのです。こんなにも学生たちは食に対して、フレンチレストランに対して興味を持たれていたのだと。
なので、今回はいつにもまして大真面目に行きますからね。
皆さんの琴線に触れることが出来るかどうか分かりませんが、ご静聴のほど宜しくお願いします。

私、レストランを始めて35年になります。
28歳で独立して現在63歳。
節目はありましたが、振り返るとあっという間の出来事だったような気がします。
食に興味があるからこの仕事を続けているのは当たり前の話ですが、フランスやイギリスにも何度も足を運び食べまくりました。
もちろん東京や大阪も神戸も北海道も九州、金沢もいえいえ日本全国。
先日は富山の山奥のホテルレストランにも行ってきました。どこに行っても食べる物は、フランス料理。
好きなんですよねフランス料理が。そしてそれはこの職業を続ける限り宿命と言っても過言ではありません。
35年の間に妻と食べたフランス料理や飲んだフランスワイン、費やした交通費にホテル代。
その他諸々全部合わせたらおそらくセキスイハウス2~3棟は建ったかも知れません。

でもね、この仕事はビジネスであってビジネスではありません。
言うなればライフワーク。自分の夢を一生賭けてやり遂げたいと言う強い気持ちがここまでやって来れた原動力です。
陶芸家なら器を、家具職人ならタンスや椅子の製作に命を捧げるように僕も彼らを見習いたい。
ただ、オーナーシェフはこだわらなければいけない範疇が他の職業に比べるとやや広いかも知れません。
美味しい料理なんて、もはや当たり前。素晴らしい食材は電話一本で入ります。それを料理する事なんてお手の物ですし。
オーナーシェフは、美しく高価な皿に綺麗な料理を盛り付け、両腕に掲げてスタートラインに立っているのです。
走りだしたら、周りを見ながら我がレストランは、お洒落で店内は清潔か。花は枯れていないか。額縁は傾いていないか。ホールスタッフは、フレンドリーでありながらも節度をわきまえているか。
口が臭くないか、脇の匂いはケアしているか。カッターシャツの首元からだらしなく下着が見えていないか。
そして厨房は清潔か。言い出すとキリがありません。
しかも今言ったことは100分の1にも満たないのですから厄介です。
そして肝心の料理は伊勢志摩地方ならではの特色を出しているか。常に新しい料理を研究しているのか。

これがレストランなのです。
カンパーニュ、バンボッシュなどうましくに伊勢シェフクラブの面々。
その他競合店と切磋琢磨し親指の爪先だけでも先に飛び出していたい。
そのためにも、どっぷりとフレンチの世界に入り込んでいるのです。
ただ、どのレストランに出かけても料理の真似はいたしませんよ。
僕が参考にしたいのは新しい食材や料理と料理の間隔のま、料理のポーションや酸味の使い方、グラスワインの流れなんかも大いに興味があります。
要するに63歳の料理人が43年前に7~8年修行しただけのことを振りかざしていては生き残れないということです。
贅沢な趣味だと言われても食べ歩くことで最前線のレストランの動向をダウンロードして常に書き換えていかなければボンヴィヴァンは腐ってしまう。
それが自分との闘いです。
こうしてレストランを鍛え上げることで他県からもお客様を呼ぶことが出来る。
今回のテーマである食を通した地域の活性化は、イベントではありません。花火を打ち上げても終了したらみんなウチに帰って来年まで来ないでしょ。
僕たちは強い意志を持ち地道にコツコツと毎日草むしりのように地産地消に取り組んでいかなければなりません。

この後で話すカンパーニュ東シェフ、その後の質疑応答タイムに参加するバンボッシュ福井シェフ。 二人はかけがえのない良き友であり手の内を知り尽くしたライバルです。

みなさんご存知ですか?
ライバルとは陰で悪口言って引き摺り下ろしたり、毒を盛ったりたりするものではありません。
正々堂々とがっぷり四つに組んでフェアーなプレーをするもの同士が認め合う関係です。
ライバルとはかように健全で親密で尊いものだということをお伝えしたうえで僕の話は終わらせていただきます。

さて、この後は東シェフのユーモアたっぷりでシュールなお話を聞かせてもらいましょうか。
僕も楽しみです。ライバルですから。